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ピアカウンセリングとはピアサポートのうちの一つです。
同じ立場、境遇、病気、悩みを持つ人同士で話し合い、聴き合うことを行います。
ピアカウンセリングは一般のカウンセリングと違い、心理学の専門資格を持つカウンセラーに話すことではありません。
同じ体験、悩みを持つ仲間だからこそ、分かり合える、心の支えになることができるというものです。
そしてその語り合いを通して、自分で自分を元気づけるということにつながっていきます。
人は悩みを打ち明けたり、誰も聴いてくれなかった思いを聴いてもらえると結構スッキリします。
そして気持ちが前向きになったりもします。
仲間が自分と同じ体験をしているということを聞くことも、不思議と安心した気持ちになります。
自分の悩みを話したり、相手の話を聞いたりして
「みんな自分と同じ悩み、苦しみを感じているんだ」
「苦しんでいるのは自分だけじゃないんだ」
とわかるだけでも気持ちが楽になることでしょう。
悩みや苦しみを誰にも話せず、自分だけで考え込んでしまうことがあります。
また周りに同じような悩みを持っていない人がいる場合も多いです。
しかし、同じ境遇、病気、悩みを持った人達の間でも、自分とは違った知識を持っていたり、経験をしてきています。
その人達から話を聴くことで、新しい知識や新たな気づきを得ることができます。
そうして自分の視界が開けたり、新たなことを試してみようという気持ちが湧き上がってくるかもしれません。
悩み、苦しみがあると心が閉じこもりがちになります。
ピアカウンセリングでは、守られた空間の中で、自分の気持ちを話すことができます。
人との対話と交流を安心して持てる機会になります。
仲間が集まってのグループピアカウンセリングではどういうことを意識しながら語り合い、聴き合いを進めていくのか挙げていきます。
私が思うピアカウンセリングの特徴が2つあります。
1つ目は「意識的に想像する」
2つ目は「意識的に感じようとする」
ピアカウンセリングでは語り手が自分の気持ち、思いを語ることを中心として場が流れていきます。
仲間である聴き手は、語り手の感情や感覚を意識的に想像しながら聴きます。
この「意識的に』というのが普通の会話や仕事の話と違うところです。
意識的に想像しながら聴くことでより深く共感することができます。この想像を無意識に自然とできる人が『聴き上手』と言われる人なのでしょう。
でも想像しようとしても想像できないこともあるかもしれません。また自分の想像している以上の気持ちや感覚を語り手が感じているかもしれません。それでも想像することには意味があります。
こんなこと誰でもよく思うことがありませんか?
「自分ができるんだから、他の人も同じようにできるでしょ?」
「他の人ができるんだから、自分も同じようにできるはず」
「自分にできないから、他の人もできないんじゃないかな?」
「自分にできないのに、どうして他の人はできるんだろう・・・」
「自分はそんなことしたことないから、あの人の考えはわからない」
「自分はそんな体験がないから、あの人の感覚がよくわからない」
ちなみに意外と思わないこともあります。
「他の人はできないのにどうして自分はできるんだろう?」
たとえ同じ病気の仲間でも体と心が違います。症状の程度、辛さの感覚、考え、気持ち、心の思いはみんなそれぞれ違います。こういった違いがあるので共感は自然とできるようで意外と難しいことです。
聴き手は語り手との違いを頭に置きながら、語り手の気持ちや感覚を意識的に感じようとすることが大切です。
感じようとしない場合、語り手と聴き手の間で感情や感覚の食い違いが起こってしまいます。
だからこそ相手の感覚がよくわからなくても想像することには意味があります。自分には想像しきれない感覚や感情、気持ちを語り手が感じているだろうということは想像できるのではないでしょうか?
それが意識的に感じようとすることだと思います。それはきっと共感といえるのではないでしょうか。それは特に難しいことではありません。別の言葉で言えば「語り手の心と体を思いやる」ということです。
ピアカウンセリングについて複数の著書がある高村寿子先生は『8つの誓約』を挙げています。それらを引用・要約して述べます。(注:原書での表記「カウンセリー」を語り手、「カウンセラー」を聴き手と言い換えています)
1 批判的にならない
語り手は批判をしてほしいわけではありません。悩み、気持ち、思いをただ聴いてもらいたいのです。
2 共感を示す
共感は相手の感情を想像することです。自分の基準ではなく、相手の基準から相手のことを理解しようとすることです。 共感は相手に示すことによって初めて語り手を支えることができます。表情を変えたり、相槌を打ったり、うなずくことで語り手に伝わります。聴き手が共感を示さない無反応、無表情でいると、語り手は聴き手の共感を感じることができず、心細さを感じてしまいます。
3 個人的なアドバイスは与えない
ピアカウンセリングでは「問題は自分で解決できる」という立場を取っています。そのため基本的にアドバイスはせず、「語り手に何があって、どんな気持ちか」ということに目を向けます。アドバイスを与えることと、情報を与えることは違います。情報は情報として伝え、聴き手の立場からのアドバイスは遠慮しましょう。
4「なぜ・どうして」で問い詰める質問には気を付ける
「なぜ?」「どうして?」の質問は理由を訊く言葉ですが、場合によっては訊かれた人は責められる気持ちになることがあります。特に「なんで~しなかったの?」はすべきことをしなかった意味合いになってしまいます。
質問すつ時は「何があったの?」「心当たりは?」「どんな理由があったの?」などの言い方のほうが語り手が気持ち、考えを整理する手助けになってより良いでしょう。
5 語り手が抱える問題の責任はとらない
人の悩みを聴いていると聴き手は問題を解決してあげようという気持ちになる人も多いと思います。特に男性はアドバイスをする傾向があるようです。ピアカウンセリングでの聴き手の役割は、共感を示すことです。そうすることで語り手を支えることができ、語り手が自分のことを支えられるようになることを手助けすることにつながっていくことでしょう。
6 解釈をしない
相手の動機、性格、社会的状況などを推測すると解釈が始まります。聴き手は語り手を解釈をする必要はありません。聴き手は聴くことで、語り手が自分の考えを自分でまとめたり、気持ちの整理をしたりすることができるようになることが大切です。
7 現状と現時点に視点を据える
ピアカウンセリングでは基本的には「いま、ここで」の視点が大切です。ただ過去の気持ち、思いや出来事を思い出すことも必要になる場合もあるでしょう。過去や未来への感情を表現する時、現時点でそれをどのように感じているかが大切です。
8 感情と向き合い、感情について話し合う
人はいろいろな状況にある時、なんらかの感情を持っています。感情に目を向け、表現し、感情を明らかにして、感情について話し合うことが重要です。
以上ピアカウンセリングで意識する8つのことがありました。少し「難しいなぁ」「面倒だなぁ」と感じる方もいるかもしれません。
でもこういったことも一言で言えば「語り手の心を思いやる」ということ。同じ病気を経験している仲間であれば、きっとできることと思います。